訪問販売のトラブルは、契約する人の年齢が上がるほど増えていきます。とくに高齢者では、85歳以上になると訪問販売の割合がもっとも高くなることが、国民生活センターの最新の統計からわかってきました。今回は、相談件数の推移を見ながら、親の玄関で今日から始められる備えを整理します。
高齢者の訪問販売トラブル、相談は5年で3割増えている

国民生活センターが2026年9月16日に公表した資料によると、契約当事者が65歳以上の消費生活相談は、2025年度に330,497件寄せられました。前の年度(304,674件)と比べて、約25,800件の増加です。相談全体に占める65歳以上の割合は37.7%で、相談の3件に1件以上が高齢者に関するものという計算になります。
| 年度 | 65歳以上の相談件数 | 相談全体に占める割合 |
| 2021年度 | 251,848件 | 34.1% |
| 2022年度 | 268,879件 | 34.2% |
| 2023年度 | 277,636件 | 35.8% |
| 2024年度 | 304,674件 | 38.6% |
| 2025年度 | 330,497件 | 37.7% |
参考:国民生活センター「2025年度 65歳以上の消費生活相談の状況」(2026年9月16日公表)。件数・割合は2026年7月31日までのPIO-NET登録分で、年齢が不明・無回答の相談を除いた集計です。
数字だけ見ると身構えてしまいますが、増えているのは相談件数であって、備えれば防げる場面も多くあります。ここから先は、増えている中身を見ていきます。
85歳以上になると訪問販売の割合がもっとも高くなる
販売の方法別に見ると、通信販売は65〜69歳の相談で割合がもっとも高く、年齢が上がるにつれて割合が下がっていきます。反対に、訪問販売・電話勧誘販売・訪問購入は年齢が上がるほど割合が高くなり、85歳以上になると通信販売を上回り、訪問販売の割合がもっとも高くなります。平均契約購入金額は約73万円、平均既支払金額は約51万円でした。
| 年代の目安 | 相談で目立つ傾向 |
| 65〜69歳 | 通信販売の割合がもっとも高い |
| 年齢が上がるにつれ | 訪問販売・電話勧誘販売・訪問購入の割合が上昇 |
| 85歳以上 | 通信販売を上回り、訪問販売の割合が最も高くなる |
参考:国民生活センター「2025年度 65歳以上の消費生活相談の状況」(2026年9月16日公表)。金額は同資料の平均値です。
離れて暮らす親のスマホやパソコンの使い方は気にかけていても、玄関先でのやりとりは案外見落としがちです。ここが盲点になりやすいところです。親の契約まわりを一度に見直すなら、親が変な契約をしていないか確認する方法|見守りチェックリストもあわせて使えます。
親の玄関で訪問販売を止める3つの備え
訪問販売そのものを完全になくすことはできませんが、玄関先での「その場の勢い」を減らす備えはいくつもあります。特別な工事や費用がなくても、今日から始められるものを3つに絞りました。
訪問販売お断りステッカーを自治体で確認する
玄関に「訪問販売お断り」のステッカーを貼っておくのは、昔からある備えですが、効果を疑問に思う方もいるはずです。実は自治体によっては、ステッカーを無視した勧誘を条例違反としているところがあります。たとえば大阪市消費者保護条例では、「訪問販売お断り」のステッカーを貼るなど契約する意思がないと表示しているのに事業者が勧誘する行為は、条例が禁止する「不当な取引行為」にあたるとされています。
ただし、ステッカーの扱いや条例の有無・内容は自治体ごとに大きく異なります。お住まいの自治体や消費生活センターのホームページで、配布の有無と実際の効力を確認しておきましょう。
参考:大阪市「『訪問販売お断り』のステッカーを貼っているのに勧誘することは大阪市消費者保護条例違反です」
インターホン越しで訪問販売の対応を完結させる
「点検に伺いました」「電力会社の者です」と名乗る訪問には、まず疑ってかかって大丈夫です。国民生活センターの相談事例でも、電力会社を名乗る業者の点検後に交換工事を契約してしまい、あとから契約先の電力会社に確認したところ無関係の業者だったというケースが報告されています。同センターは、法定点検では点検後に調査員が分電盤の交換工事の契約を持ち掛けることはない、とも説明しています。
ドアを開けずにインターホン越しで話を聞き、少しでも不審に感じたら「うちは訪問販売はお断りしています」と伝えて切り上げましょう。電話勧誘も同じで、留守番電話の設定や迷惑電話防止機能を使い、知らない番号にはすぐ出ない仕組みにしておくと安心です。分電盤の点検を装う手口は点検商法の手口と断り方|急増する分電盤の勧誘に注意でくわしく整理しています。
参考:国民生活センター「分電盤の点検商法にご注意ください-相談が各地に広がり増加しています-」(2026年9月16日公表)
家族にすぐ相談できるルールを決めておく
玄関先で契約するかどうかを一人で決めさせないことが、いちばんの備えになります。「点検や勧誘があったら、契約する前に必ず電話する」という約束を、離れて暮らす家族の間で決めておきましょう。相談された側も、その場で良し悪しを判断せず、「一度断って、契約先や公式の窓口に確認してから決めよう」と伝えるだけで十分です。焦らせる話し方をする業者ほど、時間を置かれることを嫌います。
帰省のタイミングで話しておくと切り出しやすくなります。話す順番は帰省時に親の見守りチェック|契約・電話・玄関の3点にまとめています。
それでも契約したら|訪問販売は8日間のクーリング・オフ
玄関先で契約書にサインしてしまっても、あきらめる必要はありません。訪問販売は、特定商取引法にもとづき、申込書面または契約書面のいずれか早いほうを受け取った日から起算して8日間はクーリング・オフができます。はがきなどの書面のほか、電子メールなどの電磁的記録でも通知できます。書面の記載内容に不備があるときは、所定の期間を過ぎていてもクーリング・オフができる場合があります。
クーリング・オフができる取引かどうか迷ったときや、手続きの書き方がわからないときは、一人で判断せず、消費生活センター等に相談してください。なお、同じ「玄関先の取引」でも店舗に持ち込んだ買取は扱いが変わります。くわしくは貴金属の店舗買取にクーリング・オフなし|断り方3つをご覧ください。
参考:国民生活センター「クーリング・オフ」
その場で使える断り方のセリフ例
いざというとき、とっさに言葉が出てこないこともあります。あらかじめ言い回しを決めておくと、迷わず切り上げやすくなります。
| 場面 | 断り方の例 |
| インターホン越し | 「うちは訪問販売はお断りしています。失礼します」 |
| 点検を持ちかけられたとき | 「点検が必要かどうかは、契約している業者に自分で確認します」 |
| その場で契約を迫られたとき | 「今日は決めません。家族に相談してからにします」 |
| 書面を渡されたとき | 「持ち帰って、消費生活センターに相談してから返事します」 |
国民生活センターも、「電話等で点検を持ち掛ける業者には安易に点検させない」「点検した業者とその場で契約しない」ことをアドバイスとして挙げています。実在する事業者を名指しして「詐欺だ」と決めつける必要はありません。まずは時間を置くことが、いちばんの防御になります。
参考:国民生活センター「分電盤の点検商法にご注意ください-相談が各地に広がり増加しています-」(2026年9月16日公表)
よくある質問
Q. 「訪問販売お断り」ステッカーを貼れば、絶対に勧誘されなくなりますか?
A. ステッカー自体に強制力があるわけではありません。ただし自治体によっては、ステッカーを無視した勧誘を条例で禁止しているところがあります(例:大阪市消費者保護条例)。効力の範囲は自治体ごとに異なるため、お住まいの自治体窓口で確認しておくと安心です。
Q. 契約書にサインしてしまったら、もうクーリング・オフはできませんか?
A. 訪問販売は、申込書面または契約書面のいずれか早いほうを受け取った日から起算して8日間はクーリング・オフができます。期間内であれば、はがきや電磁的記録で契約の申し込みの撤回や解除ができます。判断に迷ったら、期間内に最寄りの消費生活センターへ相談しましょう。
Q. 訪問してきた業者が名乗る会社が本物か、その場で確認する方法はありますか?
A. その場での名刺や説明だけで判断せず、一度業者を帰し、契約している電力会社やメーカーへ自分で連絡して点検の依頼があったかを確認する方法があります。国民生活センターの相談事例でも、家族に相談したあとに契約先へ確認し、無関係の業者だとわかったケースが報告されています。
まとめ
65歳以上の消費生活相談は5年で3割ほど増え、85歳以上になると訪問販売の割合がもっとも高くなります。玄関先での「その場の勢い」を減らすために、ステッカーの確認、インターホン越しでの対応、家族へすぐ相談できるルールの3つを、今日のうちに親子で話しておきましょう。契約してしまっても、訪問販売なら8日間のクーリング・オフができます。ここだけ覚えておけば、いざというときに慌てずにすみます。困ったときは一人で判断せず、消費者ホットライン188(いやや)へ相談してください。
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