お盆に実家へ帰ったら、まず確認したいことがあります。「契約」「電話」「玄関」の3つです。この3点を10分ほど見るだけで、離れて暮らす親が消費者トラブルに巻き込まれていないか、いち早く気づけます。あわてなくて大丈夫です。ひとつずつ順番に見ていきましょう。
なぜお盆の帰省がチェックの好機なのか

国民生活センターによると、65歳以上の高齢者は全体と比べて「訪問販売」「電話勧誘販売」に関する相談の割合が高く、なかでも70歳代はその傾向が強いと報告されています。自宅にいる時間が長いことが背景にあるとされています。
警察庁の発表では、犯人が事前に住所や資産状況を探る「予兆電話」の件数は令和7年中に331,653件(前年比+71.4%)にのぼり、1か月あたり平均27,638件にもなります。つまり全国のどこかで、親の自宅にも同じような電話がかかっていておかしくない状況です。意外に思うかもしれませんが、これは特別な家庭だけの話ではありません。
普段は電話やメールで済ませがちな親の様子確認も、帰省時なら部屋の中や郵便物を実際に目で見られます。「最近どう?」と聞くだけでなく、次の3点を具体的に確認してみてください。
チェック①契約|見慣れない契約書や請求書はないか
まず確認したいのが契約書や請求書です。電力・ガスの契約先が知らない会社に変わっていないか、屋根や外壁の点検・工事の契約書がないか、テーブルや引き出しをさりげなく見てみましょう。
クーリングオフには期間があります。消費者庁によると、訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供・訪問購入は契約書面を受け取った日から8日以内、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引は20日以内が原則です。期間内であれば契約解除の余地があるので、日付は必ず確認してください。ここだけ押さえておけば大丈夫です。
より詳しいチェック項目は、こちらの記事にまとめています。
親が変な契約をしていないか確認する方法|見守りチェックリスト
クーリングオフの起算日早見表
「いつまでなら解約できるか」は取引の種類によって違います。契約書面を受け取った日を1日目として数えます。
| 取引の種類 | 期間 | 具体例 |
| 訪問販売 | 8日以内 | 自宅を訪ねてきた業者との契約 |
| 電話勧誘販売 | 8日以内 | 電話で勧誘され申し込んだ健康食品など |
| 特定継続的役務提供 | 8日以内 | エステ・語学教室・学習塾などの継続契約 |
| 訪問購入 | 8日以内 | 貴金属の出張買取など |
| 連鎖販売取引 | 20日以内 | いわゆるマルチ商法の契約 |
| 業務提供誘引販売取引 | 20日以内 | 「仕事を紹介するので商品を買って」型の契約 |
参考:消費者庁「クーリング・オフ制度の概要」
期間を過ぎていても、業者が法令違反の勧誘をしていた場合など、クーリングオフとは別の理由で契約を取り消せることがあります。日付だけで「もう無理」と諦めず、まずは相談窓口に伝えてみてください。
チェック②電話|特殊詐欺と電話勧誘のトラブルに注意
警察庁の発表では、2025年(令和7年)の特殊詐欺の認知件数は27,832件、被害額は約1,423.1億円にのぼり、前年に比べて認知件数・被害額ともに大きく増加しました(被害額はほぼ倍増)。なかでも警察官等を名乗り捜査名目で金品をだまし取る、いわゆる「ニセ警察詐欺」が11,014件で全体の約4割(39.6%)を占め、最も多い手口だったとされています。オレオレ詐欺全体でみても、この「ニセ警察詐欺」が約75%(74.9%)を占めています。
65歳以上の高齢者被害は認知件数14,273件・被害額841.1億円で、法人被害を除く総認知件数の51.3%、被害総額の59.2%を占めます。特殊詐欺の被害は依然として高齢者に集中しているのが実情です。
身内や公的機関をかたる電話、光回線などの電話勧誘トラブルも各地で報告されています。「実家の電話が留守電中心の設定になっているか」「非通知や知らない番号にはすぐ出ない習慣があるか」を、この機会に一緒に確認しておきましょう。
電話勧誘トラブルの具体的な手口と断り方は、こちらにまとめました。
チェック③玄関|訪問販売・点検商法の痕跡を確認
見慣れないパンフレットや業者の名刺、契約書の控えが玄関まわりに残っていないか見てみましょう。「最近、点検にきた業者さんはいた?」と会話の中でさりげなく聞くのも効果的です。
分電盤や屋根の点検を口実にした強引な勧誘は、全国の消費生活センターに継続して相談が寄せられている手口です。実在の業者名を挙げて「詐欺」と決めつけることはできませんが、こうした手口が報告されていること自体は、親に伝えておく価値があります。
3つのチェックの早見表
| 確認する場所 | 見るポイント | 気になったら |
| 契約 | 見慣れない契約書・請求書・通帳の記帳 | 契約書面の日付を確認しクーリングオフ期間か調べる |
| 電話 | 留守電設定・非通知への対応・最近の不審な着信 | 折り返さず、家族に相談してから対応する |
| 玄関 | 業者のパンフレット・名刺・点検の記憶 | 契約前なら断る、契約済みなら書面の日付を確認 |
参考:警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」/国民生活センター「高齢者の消費者被害(テーマ別特集)」
聞き方に迷ったら|自然に切り出せる言い換え例
「詐欺を疑っているみたいで聞きにくい」という声をよく聞きます。ストレートに聞くより、世間話の延長で切り出したほうが、親も答えやすくなります。
| 聞きにくい言い方 | 言い換え例 |
| 詐欺にあってない? | 最近、変な電話とかなかった? |
| 変な契約してない? | この請求書見たことないんだけど、何の契約だっけ? |
| だまされてない? | 最近、営業とか点検の人来た? |
多くの場合は、世間話の延長で自然に答えてくれます。責めるような聞き方にならないよう、あくまで「気にかけている」という姿勢で聞いてみてください。
気づいたときの相談先
何か気になることがあれば、親本人でなく家族から消費生活センターへ相談することもできます。地域の窓口がわからないときは、消費者ホットライン「188(いやや)」にかければ、最寄りの窓口を案内してもらえます。
もし特殊詐欺の被害が疑われる場合は、警察相談専用電話「#9110」も選択肢のひとつです。契約や訪問のことだけでなく、日常生活全般の見守りを相談したい場合は、地域包括支援センターも窓口のひとつです。国は「消費者安全確保地域協議会(見守りネットワーク)」の枠組みで、地域包括支援センターと警察・ケアマネジャー・民生委員などが連携して高齢者を見守る体制づくりを進めています。
| 窓口 | こんなときに |
| 消費者ホットライン188 | 契約・訪問販売・電話勧誘のトラブルが気になるとき |
| 警察相談専用電話#9110 | 特殊詐欺の被害や、犯罪が疑われる不審な連絡があったとき |
| 地域包括支援センター | 契約に限らず、日常生活の見守りごと全般を相談したいとき |
一人で抱え込まず、早めに相談することが被害の拡大を防ぎます。どの窓口にかけるか迷ったときは、まず188にかければ案内してもらえます。
よくある質問
Q. 親に契約や電話のことを聞くと、機嫌を損ねませんか。
A. 「詐欺を疑っている」という聞き方ではなく、「最近変わった連絡はなかった?」くらいの軽い聞き方で十分です。多くの場合は世間話の延長で答えてくれます。
Q. 遠方で帰省できない場合はどうすればいいですか。
A. 電話やビデオ通話でも、郵便物の内容や最近の外出先を聞くだけで気づけることがあります。地域包括支援センターに親の見守りを相談する方法もあります。
Q. クーリングオフの期間を過ぎていたら、もう解約できませんか。
A. 期間を過ぎても、業者の説明に不備があった場合など、別の理由で契約を取り消せることがあります。あきらめずに消費者ホットライン188へ相談してください。
Q. 業者名を挙げて「詐欺だ」と親に伝えてもいいですか。
A. 実在する業者を名指しで「詐欺」と決めつけるのは避けてください。「こういう手口が報告されているらしいよ」という伝え方であれば問題ありません。
まとめ
お盆の帰省は、離れて暮らす親の様子を直接確認できる貴重な機会です。契約・電話・玄関の3点を10分ほど見るだけで、トラブルの芽に早く気づけます。身構えすぎず、会話の延長で自然に確認してみてください。


