緊急時は自治体の避難情報に従ってください。
地震や停電のときに、エレベーターの中にいたらどうするか。考えたことがない方も多いと思います。マンション住まいの方には特に関わりの深いテーマなのに、「知っておけば大丈夫」というシンプルな情報が意外と見つかりません。この記事では、閉じ込められたときに実際にやることと、日ごろの備えを整理します。
まず大前提:自力で脱出しようとしない

エレベーターが止まったとき、一番危ないのは焦って自分で扉をこじ開けようとすることです。かごの床と着床階の床にずれが残ったまま扉を開けると、転落する危険があります。国土交通省の調査でも、建物の管理者が救出を試みた2件のうち1件は、床の段差が大きく救出を断念しています。ここだけ押さえておけば大丈夫です。動かず、待つ。それが基本です。
エレベーターは気密構造ではなく、十分な通気口が確保されています。閉じ込められても窒息の心配はありません。あわてなくて大丈夫です。
閉じ込められたときにやること3つ
| 順番 | やること | ポイント |
| 1 | 行き先階のボタンをすべて押す | すぐに動かなければ焦らず次へ |
| 2 | 非常用インターホンで連絡する | 状況を伝え、救出担当者の到着を待つ |
| 3 | 照明を確認し、体力を温存する | 停電時も非常灯が30分以上点灯する義務がある |
非常用インターホンは、建築基準法の関係規定でエレベーターへの設置が義務づけられています。停電時にも使えるよう、バッテリーによる非常照明の点灯も30分以上と定められています。真っ暗になったまま連絡が取れなくなる、という状況にはなりにくい設計です(一般社団法人日本エレベーター協会)。
連絡がついたら、あとは救出を待つだけです。国土交通省が2018年の大阪府北部地震(最大震度6弱)を対象にまとめた調査では、エレベーター保守事業者による閉じ込め救出のうち、約87%が3時間以内に完了しています。焦る気持ちは分かりますが、専門知識のある保守員や消防を待つのが、結果的に一番早い解決につながります。
参考:国土交通省「エレベーターの地震対策の取組みについて(報告)」
地震のときは「地震時管制運転」が最寄り階に停めてくれる
2009年9月28日以降に設置されたエレベーターには、地震時管制運転装置の設置が義務づけられています。仕組みはこうです。地震の初期微動(P波)を感知すると、まず最寄りの階に自動で停止して扉を開きます。そのあと本震(S波)が大きければ、機器の損傷を防ぐために運転を休止します。ここで停まった状態が、閉じ込めにつながることがあります。
ただし、大阪府北部地震では、震源に近いエリアでP波を感知してから強い揺れが来るまでの時間が約2〜5秒しかなく、最寄り階に着床する前に緊急停止してしまうケースもありました。地震時管制運転装置があれば絶対に閉じ込められない、とは言い切れない、という点は知っておくとよいと思います。
参考:一般社団法人日本エレベーター協会「エレベーターの安全対策」/国土交通省「エレベーターの地震対策の取組みについて(報告)」
地震のあと、揺れが収まってもすぐには乗らない
地震の直後は、エレベーターの利用そのものを控えます。地震感知センサーの誤作動や停電などで、乗っている途中に急停止し、閉じ込められる恐れがあるためです。建物の管理者による安全確認が終わるまで、階段を使うのが基本です(日本エレベーター協会)。すでに中にいて揺れを感じたときは、行き先階のボタンをすべて押し、最初に停止した階で降ります。
日ごろからできる備え
| 備え | 内容 |
| 乗る前の一言確認 | エレベーター内の非常用インターホンの位置を、乗るたびに一度見ておく |
| 防災キャビネットの確認 | 簡易トイレや飲料水を備えたキャビネットが設置されているマンションもある。自宅の建物にあるか確認しておく |
| 高層階の方は階段も想定 | 停電・地震直後はエレベーターが使えない前提で、階段での移動時間も一度確認しておく |
| 体調に不安がある家族と情報共有 | 非常用インターホンの使い方を、家族全員が分かる状態にしておく |
防災キャビネットの設置は、国土交通省が建物所有者・管理者向けに促している対策のひとつです。分譲マンションであれば管理組合、賃貸であれば管理会社に、自分の建物のエレベーターに設置があるか、一度確認してみるとよいと思います。
救出までの時間の目安(あくまで参考値)
「どれくらい待てばいいのか」は状況によって大きく変わるため、断定はできません。参考として、大阪府北部地震のデータでは、閉じ込め救出の約87%が3時間以内、残り約13%が3時間を超えました。3時間を超えた主な原因は、交通渋滞による保守員の現場到着の遅れと、電話回線の混雑による連絡の遅れです。大規模災害時は、通常より時間がかかることがある、という前提で待つ心構えを持っておくと安心です。
参考:国土交通省「エレベーターの地震対策の取組みについて(報告)」(大阪府北部地震・2018年6月の調査に基づく)
よくある質問
Q. エレベーター内で連絡が取れない場合はどうすればいいですか?
かご内のインターホンは、建物の管理人室や警備室などと連絡できる通話装置として設置されています。応答がない場合も回線の混雑などで遅れているだけのことが多いので、繰り返し呼び出しつつ、扉をこじ開けるなど自力での脱出は避けてください。
Q. マンションの高層階に住んでいますが、階段を使う練習は必要ですか?
停電や地震の直後はエレベーターが使えないことを想定し、非常階段の場所と、実際に歩いてどれくらい時間がかかるかを一度確認しておくと安心です。体力に不安がある家族がいる場合は、休憩できる踊り場の位置も合わせて確認しておくとよいと思います。
Q. 閉じ込められている間、スマートフォンで119番通報してもいいですか?
非常用インターホンでの連絡が優先ですが、つながらない場合はスマートフォンで消防に連絡しても問題ありません。ただし国土交通省の調査では、消防が現場に到着してもエレベーターの構造上の理由で保守員の到着を待つケースが多く、救出の主体は基本的にエレベーター保守事業者になります。
まとめ
エレベーターが停まったときに大切なのは、慌てて自分で扉を開けようとしないことです。行き先階のボタンをすべて押し、非常用インターホンで連絡し、あとは待つ。この3つを知っておくだけで、いざというときの落ち着き方が変わってきます。日ごろは、乗るたびにインターホンの位置を確認すること、建物に防災キャビネットがあるかを一度調べておくことから始めてみてください。
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