「今日だけの特別価格です」「あと2件で締め切ります」——蓄電池の訪問販売でそう言われて、その場でサインしていないでしょうか。国民生活センターに寄せられた家庭用蓄電池に関する相談は、2020年度に1,314件(2016年度は325件)まで増えました。きっかけの多くは事業者の突然の訪問です。ここだけ押さえておけば、慌ててサインすることは避けられます。
蓄電池の訪問販売で報告されている手口|「今日だけ」に注意

国民生活センターが2021年6月に公表した注意喚起によると、家庭用蓄電池に関する相談件数は近年増加傾向にあり、2019年度は1,302件、2020年度は1,314件でした。契約のきっかけは主に事業者の突然の訪問だと報告されています。
| 年度 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 |
| 家庭用蓄電池に関する相談件数 | 325件 | 553件 | 926件 | 1,302件 | 1,314件 |
参考:国民生活センター「家庭用蓄電池の勧誘トラブルにご注意!」(2021年6月3日公表)。件数はPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)への2021年4月30日までの登録分で、消費生活センター等からの経由相談は含まれません。最新の年次は個別にご確認ください。
背景には、2009年に始まった「余剰電力買取制度」と2012年に始まった「固定価格買取制度(FIT)」があります。住宅用太陽光発電の固定価格での買取期間は10年と定められており、2019年以降、順次満了していきます。買取期間が終わった家庭にとって、自家消費のための蓄電池は選択肢の一つですが、それを理由に訪問を急ぐ事業者もいます。
報告されている相談事例には、次のようなものがあります。
・「市から委託された」と太陽光パネルの無料点検で訪問した事業者に「売電するための装置の一部が壊れている」と説明され、蓄電池を勧められて契約した(後日、訪問した工事担当者からは「壊れていない」と言われた)
・電力会社の関連会社を名乗る事業者に「電気料金が安くなる」と勧誘された
・「安くできるのはあと2件」等と急かされ、よく検討せずに契約してしまった
・事業者から「補助金の申請は代行する」と説明されたが、実際は申請されていなかった
意外に思うかもしれませんが、電力会社の名前を出されると安心してしまいがちです。関連会社を名乗られても、その場では契約せず名刺と契約書で事業者名を確認する習慣をつけましょう。
参考:国民生活センター「家庭用蓄電池の勧誘トラブルにご注意!」(2021年6月3日公表)
蓄電池の契約前に確認したい3つのポイント
国民生活センターのアドバイスをもとにすると、契約前に確認すべきことは大きく3つです。
1. 事業者名と訪問の目的をその場で確認する
名刺や身分証の提示を求め、会社名で検索してから判断しても遅くありません。契約するときは契約書の内容もしっかり確認しましょう。
2. メリットだけでなくコストも並べて考える
国民生活センターは「必ずしも余剰電力の売電より自家消費する方が経済的なメリットが大きいとは限りません」と注意を促しています。初期費用・工事費用も含めて考えましょう。蓄電池とポータブル電源はそもそも仕組みと価格帯が違うため、工事の要否と価格で比較した記事もあわせて確認すると判断しやすくなります。
3. その場でサインせず複数社から見積もりを取る
1社だけの説明で判断せず、少なくとも2〜3社に相見積もりを依頼しましょう。設置には電気工事士など有資格者による工事が必要で、費用は業者によって差が出やすい部分です。
補助金を理由に急がされるケースもありますが、補助金の内容や受付期間は制度ごと・自治体ごとに異なり、お住まいの自治体で確認しないと正確な金額はわかりません。自治体の補助金を探す方法は別記事にまとめています。その場で「補助金が使えるから今日決めないと損」と言われても、焦る必要はありません。
参考:国民生活センター「家庭用蓄電池の勧誘トラブルにご注意!」(2021年6月3日公表)
契約してしまっても蓄電池の訪問販売はクーリング・オフの対象
もし契約書にサインしてしまっても、慌てなくて大丈夫です。訪問販売は特定商取引法のクーリング・オフの対象になっています。
国民生活センターの案内では、クーリング・オフ期間は申込書面または契約書面のいずれか早いほうを受け取った日から起算して8日間です。書面の記載内容に不備があるときは、8日を過ぎていても解除できる場合があります。事業者からクーリング・オフができないと言われたり急かされたりした場合も、期間が延長されることがあります。
通知は、はがきなど書面または電磁的記録(メール等)で行います。送付前に両面をコピーし、特定記録郵便や簡易書留など記録が残る方法で送りましょう。
参考:国民生活センター「クーリング・オフ」
訪問販売と店舗契約|クーリング・オフの扱いを比較
| 契約のきっかけ | クーリング・オフ | 期間 | 起算日 |
| 自宅などへの訪問販売 | できる | 8日間 | 申込書面または契約書面のいずれか早いほうを受け取った日 |
| 自分の意思で店舗・展示場へ出向いて契約 | 原則できない | ― | 特定商取引法のクーリング・オフの対象取引に含まれないため |
参考:国民生活センター「クーリング・オフ」
店舗での買取契約についても同様にクーリング・オフの扱いが分かれる例があり、貴金属の店舗買取のケースでも仕組みを解説しています。契約の形によって扱いが変わる点は共通しているので、あわせて読むと理解しやすいはずです。
訪問販売を断りたいときに使えるセリフ例
その場で角を立てずに断りたいときは、次のような言い方が使えます。
「今日は結論を出しません。他社の見積もりも取ってから検討します」
「電力会社の関連会社とのことですが、社名と連絡先を書面でいただけますか」
「家族に相談してから返事します。連絡先だけ伺っておきます」
面倒に感じても、この一言を挟むだけで冷静に考える時間ができます。
よくある質問
Q. 訪問販売で契約した蓄電池はクーリング・オフできますか?
特定商取引法の訪問販売にあたる契約であれば、申込書面または契約書面のいずれか早いほうを受け取った日から起算して8日以内は、理由を問わず解除できます。書面に不備があれば8日を過ぎても解除できる場合があるため、個別の判断は消費生活センターに相談しましょう。
Q. 太陽光の売電期間が終わったら蓄電池は必要ですか?
国民生活センターは「必ずしも余剰電力の売電より自家消費する方が経済的なメリットが大きいとは限りません」と注意を促しています。メリットだけでなく初期費用・工事費用も含めて複数社で比較することが大切です。
Q. 怪しいと思ったらどこに相談すればいいですか?
消費者ホットライン188(いやや)にかけると、最寄りの消費生活センターにつながります。契約前でも契約後でも相談できます。
まとめ|蓄電池の訪問販売は「その場で決めない」が鉄則
突然の訪問で蓄電池を勧められても、その場で契約する必要はありません。事業者名を確認し、複数社から見積もりを取り、契約してしまっても8日以内ならクーリング・オフで解除できます。迷ったときは一人で判断せず、消費者ホットライン188(いやや)へ相談してください。
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